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ピンク色の給食着

中2、中3と給食委員会に所属していました。給食委員は他の給食係と違って給食着が男子は青色、女子はピンク色のものを着ていました。なぜ給食委員に2年間、合計6回も立候補していたのかはよく覚えてません。どうしてだろう。

給食委員の仕事は主に給食係への指示、配膳準備、いただいますとごちそうさまでしたの合唱の号令、後片付けなどでした。クラスから給食委員は男女1人ずつ、給食係は毎週数人ずつの交代制だったと思います。正直ほとんど覚えていません。2年間も給食委員をやったことはおそらく確かなことなのだけど、ほとんど記憶にない。嫌な思い出があったわけでもなく、忘れたいようなことでもない。にも関わらず全く覚えていない。

だけど1つだけ覚えていることがあります。

中3の春のことです。私はクラス替えで小学生のときに好きだった女の子と一緒のクラスになって、とても喜んでいたように思えます。その当時はもう好きという感情はほとんどなくなっていたけれど、でも嬉しかったものです。委員決めのとき、私は当然のように給食委員に立候補。周りも自分が給食委員をやるのが当たり前、というような感じでした。そして男子の給食委員は私で決まったわけですが、気になるのは女子の給食委員です。

男子中学生というのは御存知の通り、異性に非常に興味を持っている年齢です。「お前、アイツのこと好きなんだろー」とか「アイツがこの前、年上の彼氏と歩いててさ」とか興味津々で語りまくるのが中学生というものです。中には興味あるけど、なかなか人前ではそういった話題を出せないムッツリ中学生もいます。どちらも中学生らしいことには変りないけれど。もちろん私も同種でした。

立候補がいないとなると推薦、数人いる場合はジャンケンで決めることになります。しかし中学生です。私のようにある意味でベテランな人ならまだしも、自ら進んで仕事をしたがる人なんてそうそういません。しかも給食委員となると、青色やピンク色のダサい給食着を着て、毎週仕事をしなければなりません。

そんな女子の給食委員に立候補したのが、小学生の時に好きだったあの女の子でした。

「私、給食委員って初めてなんだ」
「じゃあなんで立候補なんかしたんだよ」
「うーん、興味あったから、かな」
「給食委員に興味持つとかないわー」
「君は人の事言えるの」
「俺は給食委員にならなきゃいけないんだよ」
「なによそれ」

その女の子とは家が近くて幼なじみみたいなものだったけど、小学生の頃から少し高嶺の花のような存在で、登下校中に会っても挨拶もできなかったものです。でもそれ以来、朝会ったりするとおはようと言ってくれたり、給食の時間の準備中も少しだけど会話できるようになりました。

夏休み直前、たまたまその子と一緒に下校することになりました。

「もう夏休みだよね。給食委員もやっと終わりだ」
「やっぱり嫌だったのかよ。最初からやらなきゃよかったのに」
「嫌ではなかったんだけど」
「やっと、って言っただろ」
「そうだね。やっとこのつらい時間から開放されるなーって」
「お前、言ってることが変だから」
「うん、知ってる」
「まぁいいや。ってことは2学期はもうやらないんだろ」
「そうだね。私には向いてなかったよ」
「面倒くさいってはっきり言えって」

「君って本当に馬鹿だよね」

そう言って彼女は家の中に入っていきました。その時も彼女の気持ちや自分の気持ちには気付いていたと思う。でもどうしても素直になれませんでした。素直になることが恥ずかしかったから、だから自分の気持ちを抑えて、彼女の気持ちにも気付かないふりをしました。もしかすると、彼女の気持ちには本当に気付いていなかったのかもしれません。どちらにしろ、今となってはわからなくなってしまった遠い過去の思い出です。

2学期も私は給食委員になりました。でも、ピンク色の給食着を着た女の子は彼女ではなく、嫌々仕方なく委員にさせられた別の女の子でした。1学期に比べて、どことなく給食の時間が楽しくなかったのは今でも忘れることができません。