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There’s no more to see.

周りは完全なる闇で、小さな黒い箱に押し込められているような重厚感と同時に、どこか暖かな温もりも感じられた。そこが布団の中であることに気付いて僕は胸を撫で下ろしたが、布団の外には本当の闇が広がっているようで不安を拭い去ることはできなかった。

子供の頃、僕は闇を恐れていた。でも、闇といっても小さな空間を満たす闇は逆に安心感を与えてくれた。本当に怖かったのは大きな闇だった。暗くなった部屋で目を閉じると、耳元では何者かが囁き始め、僕の身体を包み込んで離さない。自分の思うように身体を動かすことが出来ず、そこから逃れることは不可能だった。だから暑い日も寒い日も、僕は闇から逃げるために布団を身体に巻き付けた。

そうした布団による闇からの防御は、布団の中で新たな闇を生み出した。でも、その闇はそれまでの闇とは違って恐怖を感じることはなかった。まるで今までずっと彼と友達だったかのように、僕は新しい闇と一緒に外の闇に対抗した。1人で戦うことは怖かったし、立ち向かえる勇気もなかった。彼と一緒に戦えば勝てるかもしれない、そう思っていても心の中では絶望していた。新しい闇は小さかったからだ。

ダビデはゴリアテを打ち負かした。僕には、僕達にはできるのだろうか。僕と小さな闇は抗った。無理だという声が聞こえた気がした。それでも、僕は信頼出来る仲間がいて、虐げられる存在から戦う存在へと変わることができた。きっと勝利の先には何かが待っている。その何か、がわからないまま戦い続けた。が、負けた。

僕と小さな闇は引き離され、また1人ぼっちになった。大きな闇は再び僕に襲いかかり、そのまま食われた。しかし何も変わっていなかった。大きな闇は目の前から消えており、後に残されたのは静寂と、月に照らされ少しだけ淡くなった部屋の内装だった。遠くでは車の音がして、鳥の鳴き声が空へこだましていた。闇はどこにもなかった。ただ1つ、小さな闇がいたという温もりが僕を包んでいた。