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蔑ろにされる低所得者層と消費税増税法案の真の目的

消費税増税法案が衆院で可決され、来週から参院で審議が開始されます。自民・民主・公明が三党合意しているので法案可決はほぼ間違いない状態となっています。この消費税総勢法案ですが、低所得者対策は先送りにされてとにかく増税を急いでいるというのが現状です。いくつかの対策案が出ているものの、それらの議論がまとまらない内の法案可決というのは、あまりにも横暴であると言わざるを得ません。

消費税増税による低所得者対策には「給付付き税額控除」*1と「軽減税率」*2の2つがあります。前者は減税と現金支給、後者は食料品などの日用品に対する軽減措置です。しかし、どちらにもいくつかの問題点を含んでおり、例えば低所得者といっても不動産を所持している者もいれば、単純に年収が平均以下という者もいます。そういった低所得者らを政府内で管理することはプライバシー等の観点から消費者側の批判があります*3。また、軽減税率といってもお米1つをとっても価格差があるなど、選定が非常に困難です*4

しかし政府はこうした低所得者対策をしっかりとまとめないままに今回の増税法案に踏み切りました。さらにその増税されたお金の使い道が明確に説明されないまま、国の借金が無駄に増えていくだけという可能性を含んでいます*5。復興財源は20兆円を超す*6にも関わらず、依然として震災によってダメージを受けた被災地復興は進んでいません。国民の政府不安が増大していくのが目に見えてわかります。

ではどうして政府は消費税増税をこんなにも急いでいるのか。それは自衛隊の集団的自衛権行使に伴う憲法改正を目指しているからです。社会保障と税の一体改革というものの、現状では社会保障制度改革は先送りにされています*7。少子高齢化が進行する現在、それらへの対策が重要視されなければならないものの、ほとんど進んでいないというのが実状です。増税は何のためにするのか、それが国民には一切説明されていないのです。考えられるのは軍事費予算の増加です。これまでにも、消費税が大企業や軍事費に使われていたのではないかという議論はいくつか出ています。その軍事費増加の目的は、自衛隊の集団的自衛権行使に向けた準備と、それに伴う憲法改正です。

野田首相は現憲法に基いて、集団的自衛権の行使を禁ずるという解釈を先日述べました*8が、実際は野党時代に集団的自衛権行使を主張しています*9集団的自衛権行使によって得をするのはアメリカと財界です。現在は憲法によって自衛隊が戦地にて武装攻撃を行うことはできませんが、集団的自衛権行使が認められてしまうとアメリカなどといった軍隊と共に行動することが可能になります。それはつまり戦争を行うことであり、そうなると日本において兵役が課されることも予想されます。戦争が始まってしまえば戦場に向かうのは国民であり、政府は安全な場所から指示するだけです。さらに兵器の増産は財界の大企業に利潤をもたらし、朝鮮戦争に見られたような戦争成金が次々と登場してきます。戦争は日本の主要ビジネスとなり、大企業は利益を得て、逆に戦場で死んでいくのは国民ということになります。

話は少し変わりますが、日本の戦争歴史教育は主に被害者の立場から語られてきています。加害者視点では全く語られていません。それはもちろん日本の右傾化が1つにあり、日中戦争南京事件といった日本本土外で行われた戦争行為は一概に否定されています*10。この理由には戦争の加害行為を日本史の中から消し去り、戦争に対する価値観を戦前まで戻そうとしているからです。いわゆる軍事国家化というわけです。そうなると国民は兵役や戦争参加というものに対して賛同意識を持ち始め、9条を始めとする憲法改正に前向きになっていきます*11。そして前述したように、それによって得するのは日本、アメリカ政府と財界というわけです。

消費税増税法案の附則第18条には「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する」というようあります*12。様々な解釈が可能なこの附則では、税を軍事費に用いることも「成長戦略」であると捉えることが可能です。こうしたことから、今回の消費税総勢法案は単なる増税ではなく、日本の軍事国家化を見据えた準備案であると考えられるのです。

戦争で犠牲になるのは国民です。戦争は、アメリカのように低所得者らが兵士にならざるをえない社会を生み出します*13。日本の軍事国家化、兵役義務化に賛成している人たちはそれを理解しているのでしょうか。

*1:[http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/gaiyou/04.htm:title=税制抜本改革について : 財務省]

*2:軽減税率については諸外国の例と比較して妥当ではないという意見が出ている。上記財務省資料参考

*3:[http://stockkabusiki.blog90.fc2.com/blog-entry-933.html:title=給付付き税額控除について :投資十八番(FC2時代)]

*4:国税庁がまとめたものを参考:[http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/46/takada/hajimeni.htm:title=食料品等に対する軽減税率の導入問題(要約]

*5:[http://www.nikkei.com/money/investment/stock.aspx?g=DGXNMSFK05019_05122011000000:title=野田内閣の消費税10%増税案は売りか買いか :株式投資入門 :資産力UP :マネー :日本経済新聞]

*6:[http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20120704ddm008040036000c.html:title=東日本大震災:復興費、20兆円超に 安住財務相剰余金1.2兆円充当− 毎日jp(毎日新聞)]

*7:[http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0005168395.shtml:title=神戸新聞|社説|社会保障先送り/不安解消が与野党の責務]

*8:[http://www.asahi.com/politics/update/0606/TKY201206060453.html:title=朝日新聞デジタル:首相「集団的自衛権変えず」 森本防衛相に伝える - 政治]

*9:野田佳彦著『民主の敵 政権交代に大義あり』(新潮社, 2009)

*10:戦時中の情報統制が一貫して徹底されたこともあって、史料等が存在しないのも右傾化に加担している理由と考えられる。

*11:靖国参拝問題も同様で、あくまでも軍事国家化が目的ではないかという意見もある。

*12:引用:[http://www.mof.go.jp/about_mof/bills/180diet/sh20120330g.htm:title=社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案 : 財務省]

*13:堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波書店, 2008)