『インビクタス 負けざる者たち』を観てみたよ!

新宿バルト9で観てきました。クリント・イーストウッド新作、とても面白かったです!南アフリカ初の黒人大統領ネルソン・マンデラの半生と、そして1995年に南アフリカで開催されたラグビーワールドカップにおける実際の物語。後半はずっと感動しっぱなしで不覚にも涙が零れてしまいました。映画館で1人泣く男。

で、面白いのは脇役の存在がすごく活かされているところなんです。マンデラの護衛班には人種を問わず、黒人と白人が一緒に担当することになったのですが、もちろん彼らの仲が良いわけありません。でも、ラグビーの試合に心動かされて次第に打ち解け合っていき、点が入るとまるで昔からの親友のように喜びを分かち合う。ここに人間の美しさを感じました。また、ラグビーの試合をラジオで聞いている白人警官に、何度追い返されようとも、なんとしてでも聞きたい黒人少年。試合が盛り上がるに連れて両者はお互いの間にある壁は崩れていき意気投合していく。警官が少年にコーラを奢って一緒にラジオを聞き入る姿、もうそこに人種の壁なんて存在しません。同じ人間、南アフリカ国民だ。

第44代アメリカ大統領に就任したバラック・オバマは、アメリカ史上初の黒人大統領となりました。オバマといえば「CHANGE」です。世界金融危機以降、アメリカは大不況を迎えて多くの国民が貧困状態となっています。テレビでよく見るようなニューヨークの風景なんてものはごく一部で、ほとんどのアメリカ人は明日どうやって生きていけばいいのか、ということを考えているという状況です。将来の夢も希望もない、アメリカンドリームは終わった、そういうときに現れたのがオバマでした。そのオバマと通じるところがあるのがこのネルソン・マンデラではないかなと思いました。

南アフリカといえばアパルトヘイト、人種隔離政策。「白人の、白人による、白人のための人種差別」。1980年代の世界的非難のなか1991年に法律が撤廃されるも、今でもその影響は各所に残っています。南アフリカのラグビーチームは、そのせいもあって選手の多くが白人です。そんな彼らを南アフリカの黒人国民が良いように思うわけもありません。アパルトヘイトが終わっても、人種差別は残るのです。

このように現在でも世界各地で人種差別、偏見はあります。それでも、一部ではこの映画のようにそれを感じさせないような人類共同体が完成している場所もある。差別がある、という事実を受け入れるのは当たり前ですが、その反対に差別がない場合もある、ということを知っているとこの地球も捨てたもんじゃないと思います。人間は人種が異なっていたとしても絶対にお互いを受け入れ、理解し合うことができる。未来への希望を思い起こしてくれる良い映画でした。

※形式上、【人種・黒人・白人】という言葉を使いましたがそもそも人種というものは存在しない、というのが僕の考えです。オバマはアフリカ系アメリカ人です。安易に黒人、白人などといった言葉を使いたくありませんが、今回はこうした理由で書きました。