『花咲くいろは』で学ぶ"働く"ということ

P.A.WORKS制作の完全オリジナル作品『花咲くいろは』がなかなか面白いです。今季新作アニメの個人的ベスト3に入ります。監督は安藤真裕、シリーズ構成岡田麿里、キャラ原案岸田メル、総作監関口可奈味という豪華メンツ。旅館を舞台に繰り広げられるコメディ労働アニメです。

何が面白いのかというと、主人公の女子高生が初めての労働をするという点。アルバイト経験の設定も、現段階では明らかになっていませんがおそらく未経験でしょう。そんな女子高生の初体験を描いている作品なわけです。

主人公の設定内容

今までの考えが全く通用しない労働社会にいきなり放り込まれた主人公。就活をせずにコネで入社してしまったお嬢様新入社員ですから空気読めない、というか生意気。

彼女にとって上下関係なんて存在しません。社長に対して「おばあちゃん!」などと糞生意気。上司が平社員を説教しているとき、空気も読まずに彼女は「それはちょっと言い過ぎじゃないっすか?」と。

さらに、日本伝統(笑)のお客様至上主義に反論します。お客様はもちろん大事だけど・・・などと出しゃばります。もちろんマナーなんて知る由もありません。礼儀?作法?なにそれ?おいしいの?的な感じ。

価値観の変遷

さて、彼女は働くことを目的として旅館に来たわけではありません。親が借金で夜逃げすることになり、でも女子高生が一緒に夜逃げというのはちょっと…というわけで、祖母が経営する旅館に行くことになったと。

そんな彼女だからこそ、既存の労働価値観に対して真正面からぶち当たっていけるわけです。働くために社会に出た人は就活をし、その中で価値観をねじ曲げられていく。結果、都合の良い奴隷社員へと変化していく。いやぁ、上手くできてますね。

物語が進むにつれて彼女の価値観も変化していくでしょう。それが良い方向へ向かうのか、悪い方向へ向かうのか、それはわかりません。価値観には良いも悪いもないから。

作品が向かう先は?

おそらく、この作品の最終到達地点は「働くという行為を通して得られるモノと自らの精神的成長」といったことを描くことになるのではないかなぁと思います。一生懸命に働き、怒鳴られても殴られても、それでも前を向いて辛い現実と向き合っていく。時には既存のシステムに反論したり、でもそれが通らなくて涙を流したり。そういったところから視聴者の共感を得ようとしていくのかもしれません。あくまでも個人的見解。

なんだかなぁ。これだと視聴者は「俺みたいな奴隷社員でも頑張れば報われるんだ!頑張ろう!よしっ!」みたいな感じで、そのままシステムに洗脳されていくだけじゃん。応援ソング的な位置付けでしかない。まぁ既に社会に出ている方々は洗脳されている状態なので問題はないでしょうね。彼らにとっては素敵な応援アニメになるのでしょう。

どうせなら、この日本の労働社会の矛盾点などをとことん批判していくような、そんな作品が良いなぁと。「おかしいですよ!カテジナさん!」といった感じでおかしい所をガシガシ突いていってほしかったなぁと。

労道とは

どうしてそんな働くことを人生の最重要課題として捉えなければならないのか。他を差し置いても働くことを選ぶべきである、という腐った思想。新卒採用、年功序列、終身雇用。いつまでそんなアホみたいなシステムで日本を動かすつもりなんでしょうか。

こんな話があります。僕がアイルランドに留学してた時です。バスに乗っていたのですが、急に道路の途中でバスが止まりました。もちろん信号で止まったわけではありません。運転手はバスから降りてどこかに行ってしまいました。3分後、運転手はアイスクリームを片手に戻ってきました。そのまま、何事もなかったかのように運転手はアイスクリームを食べながらバスを運転しました。

何が言いたいのかというと、それくらい適当でも社会は何も混乱しないってことですよ。もちろん日本とアイルランドは同じ国ではないのでこれを日本でやれといっても無理な話。

結局、日本は高品質・高サービスでしか生き残れない残念な国へと成長してしまったということですよ。質を落とせば神様(という名のカスタマー)からクレーム。サービスを落とせば、これまた神様からクレーム。社会が「お客様は神様です」という戯言を言い続けてきたせいで、日本の消費者は本当に糞になった。全く以て負の連鎖。悲しい国ですよ、ホント。

労道、って嫌ですね。



というか、緒花が可愛いので正直どうでもいい。緒花可愛いよ緒花。後ろから抱きしめたい。髪の毛クシャクシャしたい。