SI企業を退職しました

新卒で入社し、2年11ヶ月勤めたSI企業を本日退職いたしました。先輩方にはこの場を借りてお礼申し上げます。

ついにこの時が来たか、退職エントリを書く時が。さて、SI企業の退職エントリといえばいわゆる「SIerはナンターラカンターラ」という批判混じりなエントリがメインになると思いますが、そんなのは色んな所で書かれてきました(下記の増田文学は名作中の名作ですよね)ので省略。


入社1年目「プログラマー」

SI企業は人売り企業だ、と言われますが弊社(というか私の所属部署は)では、派遣6割、エンドユーザ受託4割という感じでした。入社して今日まで、私は後者の案件をいくつか担当してきました。

最初の1年は炎上案件にぶつかったこともあって辛かったし、たくさん泣いたりもしたけど充実していました。徹夜勤務で、先輩と夜のファミレスでささっと食事をして、戻ってコード書いて、翌朝上司に怒鳴られて、眠い目をこすりながらコード書いて、怒鳴られて、というエンドレス。いやでも良かった、仕事してる感がありました。残業代なかったけど、サビ残150時間超だったけど。社畜でもいいじゃん、俺は社会の歯車になってやる、そんなことを思っていたものです。

それに、文系出身でプログラミングを趣味でしかやっていなかった私には毎日が新鮮でした。見たこともなかったような長いコード(今思えばスパゲッティだったけども)、様々なサブシステムが連携して大きなシステムを作っている様、轟音のサーバルームとそこに設置された数々の高価な機器。楽しくて楽しくて、でもそう思えたのはきっと私に何も責任がなかったからこそだったのだと思います。

入社2年目「営業」

そんな中、営業職だった上司が退職しました。鬼のように怖い上司だったけれど、管理能力だけでなく技術力もずば抜けていたし、怖いながらもユーモアがありました。正直、怒られている時は言葉に出せないレベルの罵詈雑言を脳内で展開していましたが、まあでも尊敬していました。そんな上司が退職し、残った人々がどうなるかなんてわかりきったものです。

仕事がない、仕事を取りに行かない、受け身でただただ口を開けて待つ。仕事があっても音頭を取る人がいない、個人プレイ、他人に無関心などなど。先輩らがそういった雰囲気になっていた理由は別にあるのだけど、ここでは割愛。そういうわけで私がどうにかしたいと思って動きたくても、動ける雰囲気ではなかったです。私が動いていいのかわからなかったから、2年目の私が勝手に動いていいのかわからなかったから。

それでもちょっとずつ動いて、何かにつけてはエンドユーザ先へ足を運びました。納品のついでにコーヒーを飲みながら雑談をして、昼を一緒に食べたり、プライベートで飲みに行ったり、そうして信頼のようなナニカを築いていきました。私はそれが信頼だと思っていました。業務提案も始めました。いきなり大きな提案は無理だと思い、小さなものから手を付けました。保守作業も丁寧に、小さな金額の納品でも喜んで対応し、そうして掴んだ大きな案件。来た、これで勝つる。でもふと思ったのです、これ営業の仕事じゃん、と。

その頃には仕事でコードを書くことがほとんどありませんでした。たまにCをちょこっと書いたり、既存システムのバグ修正をしたり。プログラムなんて書かない、なら何を書くのか。見積を書く、Excelで。これ違う、私が望んでいたものと違う。

責任を負う人の不在

上司が退職して以降、プロジェクトリーダーは不在のままでした。誰かが「今回の案件のプロジェクトリーダーは君だ」と言ってくれさえすれば、入社2年目の若造なりに私も動きやすかったのではないか、と。プロジェクトリーダーが曖昧なままで、それで私はどこまで動いていいのかわかりませんでした。金額交渉は?人の配置は?プロジェクトの進め方は?技術も経験もお粗末な私がそんなことやっていいの?そもそもできるの?できてるの?わからない、でもわからないなりにやるしかない。その結果は火を見るよりも明らか。「申し訳ございませんでした」それが私の口癖になりました。

私はただただエンドユーザに謝るだけの日々を過ごすことになりました。もちろん、相手方も本気で怒ることなんてありませんでした。私がしているコミュニケーションが正しいかどうかもわからない状態で、嫌われないように嫌われないように接する。下手に出て、細かい仕事であれば無償で対応する。見積の金額は安くし、ギリギリの状態で挑む。粗利?そんなものはないに等しい。当然赤字が増えていきました。これは仕事?いや違う、ボランティアだ。気付いた時には遅く、得たものは信頼ではなく単なる「扱いやすいコマ」というものだけでした。

エンドユーザとの関係を維持したという意味では成功したかもしれないけれど、私のやり方は間違っていました。でも、それを正してくれる人は会社にはいなかったし、どうにかして正そうとしてドツボにはまっていく私を救ってくれる人もいませんでした。そうは言ってもただの甘えです。でもその甘えで会社を維持できないのも事実だと思います。私がしなければいけなかったことは、先輩に助けを求めることだったのかもしれません。助けてくれなかったかもしれないけど、それでも相談するくらいなら、話を聞いてもらうだけならできたはず。それで何か変わっていたはず。

自分1人で突っ走る、それは私が嫌っていた個人プレイそのものでした。焦るあまりに方向を見失っていたのです。そして、個人プレイで仕事をすることに何ら疑問を持たない空気。その空気を変えられない私。自身の弱さ、情けなさを痛感しました。ビジネス書をたくさん読んで私が変わっても、会社が変わるわけではありませんでした。時すでに遅し、何かが壊れていくのを感じました。

スタンドアローン・コンプレックスを目指して

このままだと成長しない。むしろダメになってしまう。いや、ダメにはならないかもしれないけど、このまま失敗を繰り返しつつも時間をかけていけばSIerとして必要なビジネス力は身に付くかもしれないけど。でもそれは自分が思い描いていたもの?たぶん違ったはず。私が文系出身でありながらこの世界に来たのは、サラリーマンとしてのビジネス力を磨きたかったのではなく、技術をもっと追い求めたかったから。「システムなんて中身がどうであれ、とにかく動けばいい」ではなかったはず。エンドユーザのシステムを理解・把握し、新規事業の提案をして、開発を外注に投げて私はその管理だけをするということがしたかったわけではないはず。

この会社にいて得られる技術力は?VBやCOBOLや古い仕様のままのCといった枯れた技術は必要悪、エンタープライズ向けシステムには不可欠な技術だけど、でもそれを私は習得したかった?違う。「技術は人に身に付くものではない、会社に身に付くものだ」なるほど的を射ている。でも個人プレイの会社で働いて、それで技術が会社に身に付く?身に付かない。個人の脳内が会社のNASに直結している?直結していない。ドキュメントを残して誰がそれを見る?誰も見ない。

転職活動を始めて1ヶ月、内定を貰って今に至ります。早速明日からになりますが、いわゆるWeb系企業というやつに入社します。最初はわからないことだらけで苦労するだろうし、仕事についていけるかどうか不安もたくさんありますが…というか不安しかない。でもせっかく貰ったチャンス、逃がさないようにしっかりと掴んで前に進もうと思います。

ご清聴ありがとうございました。